ナス法について 治療方法・症例 もくじ

ナス法とは

Dr.Nussが考え出したbarを用いた胸骨挙上術のことを言います。1987年よりDr.Nussが実施した方法であり、前もって形作った金属製のバーを漏斗胸の陥凹部に通して、これを180度回転させる事により、陥凹が改善するという手術です。

ナス法による漏斗胸矯正の原理

手術に当たっては、数多くのコツがあり、簡単な様で難しいのがこの手術です。日本に於いては1999年よりDr.Nussが作成したPectus barが保険適応となった為に、保険診療可能となりました。私共では2000年よりナス法を開始しています。

私は昔から漏斗胸以外にも様々な手術を行ってきましたが、例えば、喘息に対する頚動脈体摘出術を私の恩師・和田寿郎先生が漏斗胸に気管支喘息が合併している時に「同時手術をしろ」と言ったのでしました。この時に手術の文献を探しましたが、この手術は1980年代には行われていない、ずっと大昔の手術でありました。しようがないので解剖学書を読んで手術をしましたが、2例目の手術の傷口を見た時に、和田寿郎先生に「君がやったのかね。とっても危険な手術だったんだよ。もうしない様に。」と言われてしまいました。

新しい方法の手術を考えだしたり、解剖学書だけを読んで手術をすることを得意分野としていましたので、ナス法の手術を行うにあたり、Dr.Nussの書いた文献を見たところ、ナス法には欠点があることが分かりました。即ち、Dr.Nussは皮下、即ち筋肉の上に固定する為に、これが滑って、バーが術後にあらぬ方向を向いてしまうということです。そこで私が考えた方法は筋層下にバーを植え込み、バーを肋骨に直接太めの糸で結んで固定する事でした。

この為、当院に於いてはこれまで1例もバーの位置異常は認めていません。その後ナス法に対して様々な改善を行い、現在当院では漏斗胸の外科治療は100%ナス法で行っています。

費用について

高額療養費制度

金額的には3割負担であれば約30万円の自己負担がかかります、また月間医療費が約8万円以上となった場合(一般の方)、後で手続きをするとその差額の約22万円が戻ってきます。

但し、事前に社会保険の方は社会保険事務所に、国民健康保険の方は区・市役所もしくは町・村役場に「限度額適用認定証」を申請し、 来院時にご持参下されば、約8万円+α(食事代、部屋代等の自己負担額)のお支払いになります。勿論その場合は、差額の約22万円は戻りません。

自立支援医療(旧育成医療)

18歳の誕生日までに手術をすれば、当院では自立支援医療(旧育成医療)という国が治療費を支払うシステムを使うので、更に費用を抑えられます。費用としては、定率1割負担となりますが、現在(H20年)は市町村民税の所得割に応じて、自己負担限度額が定められています。あとは保険外自己負担額[個室を望む場合には個室料(1日2500~6000円)]と考えて下さい。一度いらして頂いて診察をすれば自立支援医療(旧育成医療)の件についてもご説明できますので分かり易いかも知れません。その時に術前検査もある程度行います。約1~2週間の入院で退院できます。

鳩胸

鳩胸とは一般的に樽状胸を意味する場合が多々有りますが、実際に医学的には心疾患に合併するものを除けば漏斗胸の近縁疾患であり、漏斗胸と同じく肋骨及び肋軟骨の過長と走行異常を認め、脊椎の異常を認めるものもしばしば有ります。胸骨の変形は漏斗胸とは逆に前方に突出しているものが鳩胸です。

漏斗胸に比較するとその頻度は少ないものですが、漏斗胸に対する胸肋挙上術と同じく、肋軟骨の過長を矯正する事により改善することができます。

おわりに

漏斗胸など、胸骨変形疾患に対する外科治療について、胸郭変形疾患は境界領域疾患として各科の対象からはずされ、積極的治療が行われないまま放置される傾向がありました。しかしながら、本疾患は国家試験のヤマでは無く、一般医にとって、直ぐに死ぬような疾患でも無いことから『このまま放っておいて構いません』と言われた患者さまがしばしば当院を受診します。

漏斗胸(鳩胸を含む)は胸郭内臓器に及ぼす影響は大であり、これに対する治療法は最終的にナス法により確立しました。手術の恩恵を受けないまま放置された本症患者さまに対して、胸部外科医による外科治療を勧めるものであります。